放射線治療とは、X線やガンマ線、電子線などの放射線を用いて、がんを治療する方法です。その特長は痛みを全く感じることなく、身体の深部にある腫瘍を治療できることにあります。動物では麻酔が必要となりますが、手術の麻酔ほど深い麻酔は必要ないため、通常は治療後そのまま自宅に帰って通常の生活が可能です。当院ではリニアック(東芝メディカルシステムズ, プライマスミッドエナジー)を用いて高エネルギーX線と電子線での治療を行っています。手術不可能な場合や、緩和的な治療、化学放射線治療についても可能な限り対応しております。
リニアックによるX線照射は、CT画像を用いた3次元治療計画により、腫瘍に対してできるだけ正確に照射します。腫瘍科では多門照射や回転照射を積極的に用いることで、できるだけ正常組織にX線が照射されないようにして、副作用を少なくするよう細心の注意を払っています。
技術的な進歩により、現在の放射線治療はできる限り正常組織への照射線量を少なくし、かつ腫瘍へ線量を集中させられるようになってきています。
IMRTは、いままで均一だった放射線ビーム内の強度を細かく変えて照射します(図1)。これにより、均一なビームで多方向から照射する3次元原体照射(3DCRT)では不可能だった形状の線量分布が可能になります(図2)。特に鼻腔内腫瘍等の頭頚部腫瘍は、腫瘍形状が複雑で、さらに眼球や脳などを避ける必要があるため、IMRTの良い適応となります。
当院ではドットデシマル社製の補償フィルター(図3)を用いたIMRTを行っております。IMRTが可能な動物病院としては国内初となります。
部位 | 件数 | 部位 | 件数 |
---|---|---|---|
頭頚部 (鼻腔内除く) | 105 | 泌尿器生殖器 | 7 |
皮膚・骨軟部 | 75 | 肝臓 | 3 |
鼻腔内 | 54 | 縦隔 | 8 |
脳・脊髄 | 51 | 乳腺 | 10 |
直腸・肛門 | 25 | その他部位 | 13 |
肺 | 12 | ||
計 (同一患者の別部位含む) | 363 |
診断名 | 件数 | 診断名 | 件数 |
---|---|---|---|
メラノーマ | 46 | 移行癌 | 4 |
扁平上皮癌 | 31 | 炎症性乳癌 | 4 |
リンパ腫 | 30 | 胸腺腫 | 4 |
肥満細胞腫 | 23 | 腺癌 | 4 |
脳腫瘍 | 21 | 多小葉性骨肉腫 | 3 |
鼻腔腺癌 | 17 | 未分化癌 | 3 |
悪性上皮性腫瘍 | 12 | ワクチン関連肉腫 | 3 |
アポクリン腺癌 | 11 | エナメル上皮腫 | 2 |
由来不明肉腫 | 11 | 下顎腺癌 | 2 |
移行上皮癌 | 9 | 肝細胞癌 | 2 |
骨肉腫 | 9 | 形質細胞腫 | 2 |
線維肉腫 | 9 | 肛門嚢腺癌 | 2 |
下垂体腫瘍 | 8 | 耳垢腺癌 | 2 |
甲状腺癌 | 8 | セミノーマ | 2 |
血管周皮腫 | 6 | 多発性骨髄腫 | 2 |
軟骨肉腫 | 6 | 直腸腺癌 | 2 |
肛門周囲腺腫 | 5 | 肉腫 | 2 |
浸潤性脂肪腫 | 5 | 乳腺腫瘍骨転移 | 2 |
組織球肉腫 | 5 | その他 | 39 |
乳腺癌 | 5 | ||
計(同一患者の別部位含む) | 363 |