Journal Club 202004

腫瘍科で行っているJournal Clubの要約を掲載いたします。内容の詳細につきましては原著論文をご参照ください。

2020.04

猫の再発・難治性リンパ腫に対してMOPPプロトコルは有効か

Efficacy and toxicity of mustargen, vincristine, procarbazine and prednisone (MOPP) for the treatment of relapsed or resistant lymphoma in cats.

MaloneyHuss MA, Mauldin GE, Brown DC, et al. J Feline Med Surg. 2020;22(4):299-304.

目的:本研究の目的は、再発または難治性のネコリンパ腫の治療におけるMOPPプロトコール(メクロレタミン、ビンクリスチン、プロカルバジンおよびプレドニゾン)の安全性を評価し、このプロトコールの反応率と寛解期間を決定することである。
方法:3施設でMOPPプロトコールを用いて治療された再発または難治性リンパ腫の38匹の猫の診察記録を調べた。評価された情報には、症例のシグナルメント、FeLV/FIVの有無、リンパ腫の解剖学的発生部位、導入プロトコール、MOPP用量、MOPP奏効率、寛解期間、血液学的および生化学的データ、および飼い主による副作用の報告が含まれた。
結果:症例の70.3%がMOPPプロトコールに反応した。奏効症例のうち、寛解期間の中央値は166日だった。最も一般的な副作用は好中球減少症と消化器症状で、18.4%の症例で報告された。55.3%の症例では、副作用は報告されなかった。奏効症例の30.8%がMOPPの開始後6か月間、15.4%の症例が開始後1年後まで寛解を維持した。
結論と意義:MOPPプロトコールは、再発または難治性のネコリンパ腫の治療に安全なプロトコールであり、高い奏効率と長期的な寛解期間が期待できる。

コメント

ネコの再発もしくは難治性リンパ腫に対してMOPPプロトコルの副作用と有効性を評価した文献。結果では良好な奏効率が得られており、MOPPプロトコールへの期待は高いと考えられる。ただし本研究では「再発リンパ腫」の症例群の割合がかなり高いため、結果の解釈には注意が必要である。すなわち再発リンパ腫であれば、以前実施していた抗がん剤(MOPPプロトコルに含まれるビンクリスチンを含む)に再び奏効する可能性があるため、当然奏効率は高くなると考えられるからである。国内では使いづらいプロトコルであるが、レスキュープロトコルとして確立されるためにはさらなるデータが必要と考えられる。