Journal Club 201912

腫瘍科で行っているJournal Clubの要約を掲載いたします。内容の詳細につきましては原著論文をご参照ください。

2019.12

骨肉腫細胞株に対するmicroRNA-34aの抗腫瘍効果

A genetically engineered microRNA-34a prodrug demonstrates anti-tumor activity in a canine model of osteosarcoma

Alegre F, Ormonde AR, Snider KM, et al. PLoS One. 2018;13(12):e0209941.

骨肉腫(OSA)は人間と犬で最も一般的で主要な骨腫瘍である。しかし過去30 年間、実行可能な治療方法に関してはほとんど進展がなく、転移性を示す患者は依然として予後不良である。近年のマウスの研究で、miR-34a が人OSA モデルに抗腫瘍効果がある可能性が示された。種間でmicroRNAが保存されているため、化学合成されたmiR-34a プロドラッグ(tRNA / miR-34a)はイヌOSAで同様の効果があり、この治療法の開発のための貴重な前臨床モデルを提供するものと仮定した。犬のOSA 細胞株を使用し、tRNA / miR-34a は、腫瘍細胞のアポトーシスを増加させながら、生存率、クローン現性増殖、転移性および浸潤性を減少させることが示された。さらに犬のOSA 細胞は、tRNA / miR-34a を成熟miR-34a に正常に処理することができ、血小板由来成長因子受容体α(PDGFRα)、Notch1、血管内皮成長因子(VEGF)などの標的タンパク質の発現を減少させた。加えて、我々のOSA 皮下移植モデルはin vivo でtRNA/miR-34a によって、腫瘍増殖を抑制させ、ネクローシスとアポトーシスを増加させ、細胞増殖能力を低下させることが示された。これらのデータは、新規miroRNA ベースの治療がOSA の自然発生の動物モデルにおいて臨床的有用性を有し、ヒトOSA 患者に対し臨床的に発展させるのに役立つ可能性があることを示している。

コメント

犬の骨肉腫は高い転移率により長期的な予後が期待できず、さまざまな抗がん剤を用いた研究がされているが、その治療成績は長い間ほとんど改善していない。近年注目されているマイクロRNAはこの現状を打開する可能性を秘めた核酸医薬である。犬の骨肉腫に対しては原発病変を外科的に治療した後の転移巣制御として使用されることになると想定され、肝臓などで代謝を受けやすいマイクロRNAをどのような状態で全身投与するかが、治療成績向上のカギになるのではないかと推察される。