Journal Club 202012

腫瘍科で行っているJournal Clubの要約を掲載いたします。内容の詳細につきましては原著論文をご参照ください。

2020.12

インスリノーマの術後合併症の発生率とその転帰

Incidence of postoperative complications and outcome of 48 dogs undergoing surgical management of insulinoma

Isaac Del Busto, Alexander J German, Elisabetta Treggiari, Giorgio Romanelli. J Vet Intern Med. 2020 May;34(3):1135-1143.

背景:インスリノーマの外科的管理を受けている犬の転帰に関する情報は限られている。
目的:インスリノーマの治療として手術を受けた犬の転帰、これらの術後糖尿病(DM)の有病率を報告し、DMの発症を予測できるかどうかを判断すること。
対象:ヨーロッパの3つの動物病院において、インスリノーマの組織病理学的診断を受けた48匹の犬。
方法:本研究は後ろ向き研究であり、電子カルテ検索から特定した。術後の生存と再発に関連する要因を決定するためにコックス比例ハザードモデルを使用し、DMの発症に関連する要因を決定するためにロジスティク回帰モデルを使用した。
結果:生存期間の中央値(MST)は372日(1~1680日の範囲)であり、I期の犬の生存期間が最も長かった。I期の犬のMSTは652日(範囲2~1680日)だったが、II期またはIII期の犬の MSTは320日(範囲1~1260日、P = 0.045)であった。術後高血糖は犬の33%(16/48) で確認され、そのうち9匹(全体の19%)が持続性DMを発症。DM発症の予測因子として使用できる要因は特定されなかった。
結論:病期と術後低血糖は、再発率の上昇と生存期間の短縮と関連していた。これにより、予後 インフォームに使用できる可能性が示唆された。この研究では、術後DMは以前に報告されたよりも多くの症例で発症したが、有用な予測因子は特定されなかった。

コメント

8%は低血糖を示していなくても、インスリノーマと診断されており、診断時には注意深い検査が必要である。本論文では術後の血糖値に関して主にまとめられており、術後の食事管理や膵炎に関する情報が少ない。周術期死亡症例は、高血糖を示した3例で膵炎およびSIRS発症により死亡しているが、これらの症例で高血糖がコントロールできなかったのか不明である。また、周術期死亡原因は高血糖が引き起こしたものなのか、侵襲に伴うものなのか等、更なる究明が必要と思われる。

2020.12

犬の良性皮膚腫瘍に対する無麻酔下凍結療法

Cryotherapy to treat benign skin tumours in conscious dogs

Martina Angileri, Tommaso Furlanello, Michela De Lucia. Vet Dermatol. 2020;31(2):163-166.

背景:凍結療法は、一般的な麻酔無しで良性の皮膚病変の治療が可能である。この方法は、麻酔下の犬でのみ報告されている。
目的:意識下の犬で、皮膚の良性腫瘍の治療のための凍結療法の実現可能性、安全性、有効性を説明する。
症例:良性皮脂腺腫瘍(46)、毛包嚢胞(6)と診断された52の皮膚腫瘍を持つ犬25例
材料と方法:Handheld spray-release system の液体窒素スプレーテクニックを使用し、意識下の犬で凍結療法を実施。凍結療法は、必要に応じて完全治癒が達成される、もしくはMax8回まで3~4週間おきに繰り返した。有効性と有害事象を記録した。
結果:29/52例(57%)で完治し、凍結療法のsession中央値は1~2回。18/52例(35%)が<0.1cmに縮小した。1例で、凍結療法後に腫瘍の拡大を認め、切除生検の病理組織学的検査結果はアポクリン腺癌だった。治療中の痛みと不快感は最も共通した(33%)有害事象だった。
結論と考察:本研究では、凍結療法が意識下の犬で実施可能であり、良性皮脂腺腫瘍、毛包嚢胞の治療、縮小に有効であることが証明された。手技は安全だが、治療中の痛みの程度をさらに調査する必要がある。凍結療法後の悪化は、外科的切除、病理学的検査の必要を示唆している。

コメント

凍結療法は、皮膚科、眼科、腫瘍科で実施されているが、ほとんどが良性腫瘍病変の治療である。これまでの凍結療法は麻酔下で実施され、本報告は無麻酔下で実施し、安全性と有効性を調査した初めての報告である。麻酔下凍結療法では治癒率が98%と報告されているが、外科切除との併用が多く、動物種も定まっていないため、真の効果はわかっていない。本報告では、92%に効果が見られた(治癒率:57%、<0.1cmに縮小:35%)。治癒率、治癒期間の差は、凍結時間(プロトコル)によるものと考えられる。無麻酔下凍結療法は気軽に実施できる反面、適応症例の選択、有害事象などの評価をされず実施されているのが現状である。今後は、評価基準を明確に設定して調査すべきである。

2020.12

猫の消化器型リンパ腫に対するロムスチンと腹腔内放射線照射の併用

Treatment of feline gastrointestinal intermediate- or large-cell lymphoma with lomustine chemotherapy and 8Gy abdominal cavity radiation therapy

Tracy L Gieger , Gabriela S Seiler , Michael W Nolan ..J Feline Med Surg. 2020 Sep;
doi: 10.1177/1098612X20959602. Online ahead of print.

目的:猫の消化器型リンパ腫(中~高悪性度)に対する新しい集学的治療プロトコール(21日間隔の治療)の結果と副作用を評価すること。
方法:前向きの単一群臨床研究であり、細胞学的に消化器型リンパ腫(中~高悪性度)と診断された12症例の猫に対して放射線の腹腔内照射(RT;4Gy×2回総線量8Gy 21日間隔)、化学療法(ロムスチン約40mg/m2、21日間隔で経口投与)、プレドニゾロン(5mg/head/day 経口投与)、コバラミン(250µg /week 皮下投与)を実施。
結果:2回目の治療の前に3症例が安楽死を選択し、進行性病変に対する治療の副作用を鑑別することは困難であった。残りの症例のうち4症例は血球減少症を発症し、7~14日間のロムスチン治療の延期や用量の減量が必要となった。21日目に実施した超音波検査において6症例は部分寛解、3症例は維持病変と判断された(全体の反応率は50%)。前述の6症例の猫のうち3症例が研究を完了し、240日以上生存した。1症例は消化器型リンパ腫の臨床症状を示さず難治性糖尿病で死亡し、他の2症例は消化器型リンパ腫が原因で死亡した。全生存期間の中央値は101日であり(95%信頼区間[CI] 9–240)。無増悪生存期間の中央値は77日だった(95%CI 8-212)。剖検は8症例で行われ、胃腸管および他の臓器全体に多発性のリンパ腫の存在が確認された。
結論:今回のプロトコールの転帰は、多剤併用化学療法(CHOP療法など)で達成された転帰に匹敵する。治療はほとんどの症例で忍容性が高く、比較的費用対効果が高かった。したがって、化学療法と放射線療法併用プロトコールの継続的な改善と強化を通じて、疾病管理の改善が達成できる可能性がある。

コメント

今回の研究は、治療が困難となることが多い猫の消化器型のリンパ腫に対する新しい治療のアプローチという点で有意義である。しかし治療への反応の記載が乏しく、臨床症状がどの程度改善したのかが不明である。化学療法(ロムスチン)と放射線療法(1.5 Gy×10日など)の併用療法の今後の展開が期待される。