Journal Club 202202

腫瘍科で行っているJournal Clubの要約を掲載いたします。内容の詳細につきましては原著論文をご参照ください。

2022.02

犬の肺原発性悪性腫瘍の病理組織型の分布と臨床転帰 340例(2010年 - 2019年)

Distribution of histopathologic types of primary pulmonary neoplasia in dogs and outcome of affected dogs: 340 cases (2010-2019)

Jourdan B. McPhetridge, Valery F. Scharf, Penny J. Regier, et al. J Am Vet Med Assoc. 2021;260(2):234-243. doi: 10.2460/javma.20.12.0698.

目的:犬の原発性肺腫瘍の病理組織学的評価に関する最新情報を提供し、犬の肺原発悪性腫瘍に対する術後補助化学療法の効果を評価すること。
対象動物:犬340頭
方法:肺葉切除術を受けた犬のカルテを回顧的に評価し、病変の病理組織学的タイプを検索した。犬の肺原発悪性腫瘍の病期分類システムを使用して臨床ステージを評価した。
結果:肺腺癌が最も多く(296/340 [87.1%]),次いで肉腫(26 [7.6%]),腺腫(11 [3.2%]),肺神経内分泌腫瘍(5 [1.5%]),形質細胞腫と癌肉腫が1例と続いた。20例(5.9%)の肉腫は、原発性肺組織球性肉腫に分類された。生存期間の中央値は、肺腺癌(399日)、組織球性肉腫(300日)、神経内分泌腫瘍(498日)の間で有意差があった。臨床ステージに基づいてグループ化した場合、補助化学療法を受けた犬と受けなかった犬の間で生存期間中央値に有意差はなかった。
臨床的意義:肺腺癌が犬の肺原発性悪性腫瘍の中で最も発生率が高いことが示されたが、非上皮性腫瘍が発生することもある。生存期間は、肺がん、組織球性肉腫、神経内分泌腫瘍の犬で有意差が認められ、様々な組織型の悪性腫瘍が発生することを認識することが重要である。肺原発悪性腫瘍の罹患犬における補助化学療法の治療効果はまだ不明であり、さらなる調査が必要である。

コメント

犬の肺腫瘍に関する大規模な報告は長年更新されておらず、術後化学療法の効果も十分に評価されていない。本研究では、腫瘍の組織型(肺腺癌、組織球性肉腫、神経内分泌系腫瘍)と臨床ステージ間予後に差があることがわかった。また、術前検査でリンパ節腫大がなかった症例のうち10%で転移が認められており、術中のリンパ節郭清または生検をする必要があるのかもしれない。術後化学療法により生存期間は延長しなかったが、レトロスペクティブ研究では限界があるため、プロスペクティブな研究が望まれる。