Journal Club 202211

腫瘍科で行っているJournal Clubの要約を掲載いたします。内容の詳細につきましては原著論文をご参照ください。

2022.11

誤嚥性肺炎の犬におけるシチジンジホスホコリンの酸素化への影響

Impact of cytidine diphosphocholine on oxygenation in client-owned dogs with aspiration pneumonia

Anda A. Young, Lucia E. Rosas, Edward S. Cooper et al. J Vet Intern Med. 2022 May;36(3):1089-1099. doi: 10.1111/jvim.16434. Epub 2022 Apr 29.

緒論:急性呼吸窮迫症候群 (ARDS) の患畜のための新薬が緊急に必要とされている。リポヌクレオチド シチジン ジホスホコリン (CDP-コリン) によるインフルエンザ感染マウスの早期または後期の感染後治療は、ウイルス増殖に影響することなく、低酸素血症、肺水腫、肺機能障害および炎症の軽減をもたらした。これらの調査結果は、CDP-コリンが動物のARDS (VetARDS)の補助治療として有益である可能性があることを示唆している。
目的:CDP-コリンの非経口投与が誤嚥性肺炎の犬のARDSを軽減できるかどうかを調査すること。
動物:誤嚥性肺炎のために獣医集中治療室(ICU)に入院した犬。
方法:ICU入院後の48時間で、プラセボ群 (0.1 mL/kg 0.9% 生理食塩水iv q 12h ; n = 8) または CDP-コリン群 (0.1 mL/kg 0.9 % 生理食塩水中 CDP-コリン5 mg/kg iv q 12h ; n = 9) によるランダム化二重盲検プラセボ対照試験を実施。
結果:入院時,プラセボ投与群とCDP-コリン投与群でシグナルメントや臨床所見に有意差は認められなかった。すべての犬が頻脈、頻呼吸、高血圧、低酸素血症、低換気、リンパ球減少、好中球減少を示した。CDP-コリン投与により、動脈血酸素飽和度(SpO2)および動脈血酸素分圧(PaO2 mmHg)と吸入中酸素濃度(%FiO2)の比によって決定される酸素化指標であるPF比が急速あるいは漸進的に、かつ臨床的に重要な増加を示し、肺胞気-動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)は低下した。これらの変化はプラセボ(生理食塩水)投与の動物では認められなかった。CDP-コリンによる治療は、最初の48時間の血小板消費量の減少とも関連していたが、検出可能な有害事象はなかった。
結論と臨床的重要性:CDP-コリンは自然発生した誤嚥性肺炎の犬のガス交換を促進するために急速に作用し、VetARDS 患者の補助的治療薬となる可能性がある。

コメント

CDP-コリンは神経保護作用等が知られ、古くから脳卒中の治療や膵炎に対して使用されてきた。近年はインフルエンザ感染マウスにおける症状改善が報告されており、本研究では犬でのARDSの治療薬として有効であるかが評価された。比較的軽症の症例が多く、症例の均一性に欠く等の課題もあるが、有害作用が認められず、安価な治療法であることから、誤嚥性肺炎の症例には使いやすいという印象を受けた。