Journal Club 202401

腫瘍科で行っているJournal Clubの要約を掲載いたします。内容の詳細につきましては原著論文をご参照ください。

2024.01

パテントブルー色素を使用したセンチネルリンパ節の可視化による、犬乳腺腫瘍の腋窩リンパ節切除の比較

Comparison of surgical resection of Axillary Lymph Nodes in Dogs with Mammary Gland Tumors with or without sentinel lymph node visualization with patent blue dye

Mayara Coutinho Carlo de Souza , Mayra Cunha Flecher , Fernanda Ming Arrais et al. Frontiers in Veterinary Science 2023 May 12. doi: 10.3389/fvets.2023.1149315

はじめに:犬の腋窩リンパ節 (ALN) は、外科的切除前に位置を特定することが難しい。ALN の解剖学的位置により、術者は外科的リンパ節切除術を思いとどまることも経験する。入手可能な文献が限られていることから、実際の転移率と予後の関連性はほとんど理解されていない。
方法:乳腺腫瘍(MGTを有する雌犬(n=41)を対象に、非ランダム化前向き臨床研究を実施した。本研究では、腫瘍の臨床所見、腫瘍サイズ、組織病理学的診断、グレードに基づいて ALN転移のリスクが調査された。本研究では、センチネルリンパ節視覚化のためのパテントブルー 2.5% (PB) 色素注射の有無によるALN切除を比較することを目的とした。合計46件の乳房切除術が行われ、5匹の犬が2回の乳房切除術を受けた。グループ1では、17匹の犬が PB 注射を行わずに乳房切除術とリンパ節切除術を受けた。一方グループ2では、24 匹の犬がセンチネルリンパ節マッピングのために PB注射を受けた。全症例のうち、ALNは38/46例(82%)で特定された。グループ1では、ALNが特定され切除されたのは58%の症例のみであった一方で、グループ2では、92%の症例でALNが特定され、100%の症例で切除された。したがって、PB の使用によりALNの特定が改善され、MGTの犬の手術時間が短縮されることが示された。
結果と考察:PB注射群では非PB注射群に比べて手術時間が有意に短かった(45分 vs 80分)(p < 0.0001)。ALN転移は全症例の32%で認められた。リンパ節の肉眼的異常、腫瘍サイズ (> 3 cm)、未分化癌またはグレード II/III 乳腺腫瘍の診断は、ALN 転移の可能性と関連していた。3 cm を超える腫瘍を呈し、進行性の組織学的サブタイプと診断された犬ではALNへの転移がより一般的だった。乳腺腫瘍の手術の際には、正しい病期分類、予後評価、および補助療法の決定のために、ALN を除去する必要があるだろう。

コメント

PB染色は短時間の染色で使用可能であり、高感度・高視認性であることが示された。乳腺腫瘍の摘出に際し、病気分類や予後評価のため、腋窩リンパ節の摘出は実施すべき手技であり、そのための手術支援としてPB染色は有用である。

2024.01

犬および猫の深在性肺腫瘤に対する蛍光透視ガイド下細針吸引は安全で正確である

Fluoroscopy-guided fine-needle aspiration of deep-seated pulmonary masses in dogs and cats appears safe and accurate.

Frédéric Jacob, PhD. JAVMA 2023 Oct 10. doi: doi.org/10.2460/javma.23.07.0413

目的:深在性肺病変を安全に採取することは困難である。この研究の目的は、深在性肺病変の大きさや深さにかかわらず、透視ガイド下での細針吸引の相対的な安全性と精度を明らかにすることである。
対象動物:顧客所有の動物;犬5頭および猫5頭。
臨床像:肺病変の位置は、透視法を用いて背腹側および側面像で決定した。側胸壁を無菌的に洗浄し、サンプリング用の針の刺入位置をマーキングした。注射器に取り付けた22ゲージの針の進路を、透視下ガイダンスを用いて追跡した。腫瘤量(Vma)と皮膚および胸膜から病変までの距離(DSK-LおよびDPL-L)を記録した。
結果:犬では、平均Vmaは137.2cm3(範囲、6.3~426.2cm3)であった。平均DSK-Lは71mm(範囲、37~101mm)、DPL-Lは33mm(範囲、16~71mm)であった。細胞診の結果は4頭でがん腫、1頭でリンパ腫であった。処置後の軽度の合併症が1頭に認められた。猫では、平均Vmaは2.4cm3(範囲、1.6~3.7cm3)であった。平均DSK-Lは42mm(範囲、20~75mm)、DPL-Lは21mm(範囲、12~32mm)であった。細胞診の結果は、2頭の猫で肺癌、2頭の猫で炎症、1頭の猫で壊死組織と一致した。
臨床的関連性:肺腫瘤の透視ガイド下細針吸引は、病変の大きさや深さにかかわらず、細胞学的サンプルを得るための安全で正確な手技である。

コメント

透視機器の発展で透視ガイド下細針吸引の技術がさらに向上する可能性がある。リアルタイムで針先を見ながら行えるので、正確に素早く行える。手技にかかる時間がCTガイド下FNAと比べて短いため、麻酔のリスクも減少すると考えられる。