Journal Club 202506

腫瘍科で行っているJournal Clubの要約を掲載いたします。内容の詳細につきましては原著論文をご参照ください。

2025.06

放射線治療を受けた浸潤性脂肪腫の犬の転期と予後因子:29例の他施設後ろ向き研究

Outcome and Prognostic Factors of Dogs Treated for Infiltrative Lipoma Undergoing Radiation Therapy: A Retrospective Multi-Institutional Study of 29 Cases

Arata Matsuyama, Valerie J Poirier and Michelle M Turek et al. Vet Comp Oncol. 2025

犬の浸潤性脂肪腫は、一般的に外科療法や放射線療法(RT)で治療される局所侵襲的な腫瘍である。浸潤性脂肪腫の治療に関する報告は限られており、最適な治療プロトコールは依然として不明である。私たちは浸潤性脂肪腫に対してIMRTまたは3D-CRTを受けた犬の結果と予後因子を遡及的に評価した。4つの医療機関の29頭の犬が含まれ、総線量の中央値は51 Gy(範囲=20-57 Gy)であった。1回あたりの照射線量は2.4から4.2 Gyで、中央値は3 Gyであった。無増悪生存期間(PFS)の中央値は1483日であり、全生存期間(OS)の中央値は1483日であった。腫瘍の進行は4頭の犬(14%)で記録され、そのすべてが51Gy未満(範囲=20-50Gy)の放射線治療を受けていた。グレードVの有害事象(AE)または二次性悪性腫瘍は、6頭の犬(21%、骨x2、皮膚x1、肺x1、尿道x1、小腸x1)で記録された。総腫瘍量(GTV)はPFS(p < 0.01)の予後因子であり、GTV(p < 0.01)と総放射線量(p < 0.01)の両方がOS(p < 0.01)の予後因子であった。手術回数と腫瘍の位置は、PFSまたはOSとは関連していなかった。これらの知見は、切除不能または不完全切除の浸潤性脂肪腫の長期局所制御のためのRTの使用を支持している。総放射線量が高いほど、長期的な局所疾患制御が改善される可能性がある。

コメント

過去の報告と同様に、放射線治療は浸潤性脂肪腫の治療として有効であり、長期間の腫瘍のコントロールが可能である。過去の報告において、晩発障害は数%であったが、今回の報告では14%とやや多く、生命に関わる障害が認められている。二次性の悪性腫瘍は病理学的には診断されてはいないものの、発生部位が照射部位と一致している場合は強く疑われている。長期生存が見込める腫瘍であるため、オーナー様へのインフォームとフォローアップが必要である。