Journal Club 202508

腫瘍科で行っているJournal Clubの要約を掲載いたします。内容の詳細につきましては原著論文をご参照ください。

2025.08

腹水のある犬の血清および腹水中の胆汁酸とビリルビンの評価

Evaluation of bile acids and bilirubin in serum and abdominal fluid in dogs with abdominal effusion

M Pascual Moreno, P Monti and M Seth et al. J Small Anim Pract. 2025 Mar;66(3):171-176. doi: 10.1111/jsap.13805. Epub 2024 Dec 4.

目的:犬における胆道破裂の診断における腹水胆汁酸濃度の有用性、および診断ツールとしての腹水/血清ビリルビン比の有用性を明らかにする。
材料および方法:本研究は前向きパイロットスタディである。2020年から2022年の間に、犬の血清および腹水サンプルを採取し、ビリルビンおよび胆汁酸濃度の測定のために提出した。サンプルは、急性期の臨床症状および腹水が認められた犬から入院時に測定した。Mann-Whitney U検定およびROC曲線を用いて、胆道破裂患者と非胆道破裂患者の血清および腹水中のビリルビンおよび胆汁酸濃度、ならびに腹水/血清ビリルビンおよび胆汁酸比を比較した。
結果:94例が対象となり、そのうち7例が胆道破裂と診断された。腹水胆汁酸濃度の中央値は、胆道破裂を起こした犬では、起こさなかった犬よりも有意に高かった(P値<0.001)。腹水胆汁酸濃度は、胆道破裂の診断において感度100%、特異度99%であった。体液/血清ビリルビン比も解析したが、群間で統計学的有意差は認められなかった(P値0.925)。

コメント

本研究対象群において胆道破裂を起こした犬の数は少なかったものの、胆道破裂の診断において、腹水胆汁酸濃度は体液/血清ビリルビン比よりも精度が高い可能性がある。胆道破裂の診断における体液/血清ビリルビン比の有用性は限られていると考えられる。これらの結論を裏付けるには、より多くの胆道破裂症例を対象としたさらなる研究が必要である。