Journal Club 202602

腫瘍科で行っているJournal Clubの要約を掲載いたします。内容の詳細につきましては原著論文をご参照ください。

2026.02

加速放射線療法とカルボプラチン併用による猫の口腔内扁平上皮癌の治療

Treatment of Oral Squamous Cell Carcinoma with Accelerated Radiation Therapy and Concomitant Carboplatin in Cats

J. Fidel, J. Lyons and C. Tripp et al. Journal of Veterinary Internal Medicine First published: 03 May 2011, https://doi.org/10.1111/j.1939-1676.2011.0721.xDigital Object Identifier (DOI)

背景/目的:ネコの口腔扁平上皮癌 (SCC) は、従来の治療では予後が非常に悪い。猫の口腔SCCの治療において、以前に発表された加速放射線プロトコルにカルボプラチンを追加した場合の有効性を検証する。
材料/方法:猫の口腔扁平上皮癌(SCC)31例。腫瘍部位は舌(n = 9)、下顎(n = 10)、上顎(n = 7)、扁桃(n = 4)、頬(n = 1)であった。遠隔転移の所見がない口腔扁平上皮癌の猫を対象とした。
9日間で3.5Gyの14分割照射を行う加速放射線療法プロトコルを用いた前向き試験。1日目と4.5日目にカルボプラチン90~100mg/m2を投与した。照射は1日2回行い、治療間隔は6時間とした。
結果:全生存期間の中央値は163日(範囲:53~770日)、平均は319±53日であった。生存期間の有意な予測因子は、腫瘍部位(P = .004)と30日時点での完全奏効の有無(P = .001)であった。扁桃腺または頬部に腫瘍を有する猫は治療への反応が最も良好で、平均生存日数724日と長期生存を示し、中央値には達しなかった。
結論:このプロトコルは、猫の口腔扁平上皮癌(SCC)に対する積極的でありながら忍容性の高い治療であり、これまで報告された治療法と比較して生存率の向上が期待される。

コメント

猫の口腔内扁平上皮癌の治療における化学放射線療法の標準化と、更なるプロトコルの改良で生存期間の延長を期待する

2026.02

2022年獣医クリティカルケア(治療)ドメイン1-リスクのある集団の定義における抗血栓薬と血栓溶解薬の合理的な使用に関するコンセンサスの更新およびコンセンサス内容を踏まえた腫瘍外科症例への適用

2022 Update of the Consensus on the Rational Use of Antithrombotics and Thrombolytics in Veterinary Critical Care (CURATIVE) Domain 1- Defining populations at risk, etc.

Armelle deLaforcade, Lenore Bacek and Marie-Claude Blais et al. J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2022 May;32(3):289-314. [SJR: 0.69, Cited: 23] doi: 10.1111/vec.13204. Epub 2022 May 2.

CURATIVEは、犬猫における血栓症の発症リスク評価と抗血栓薬の実践的使用を標準化するために、ACVECCが作成したコンセンサスである。2019年の小動物版では、リスク集団、治療適応、具体的プロトコル、モニタリング、休薬の5領域について体系的レビューが行われ、500超の研究から59のステートメントと83の推奨が整備された。全体として、血栓症を有する、あるいは血栓形成リスクを持つ小動物に対する診療指針を提示すると同時に、この分野になお大きな知識ギャップが残ることを示した。 本ゼミでは、腫瘍外科に対してCURATIVEに即して抗血栓薬の使い分けを考えた。犬の腫瘍外科では、腫瘍そのものによる過凝固に加え、手術侵襲に伴う血管内皮障害、麻酔や術後臥床による血流停滞が重なり、Virchowの三徴が成立するため、周術期血栓症を常に意識する必要がある。一方で、腫瘍犬の全例に一律の抗血栓療法を行うことは推奨されず、凝固亢進の存在や他の危険因子を踏まえた症例ごとの判断が重要である。本ゼミでは、2022年CURATIVEガイドラインを軸に、犬の腫瘍外科における静脈血栓塞栓症(VTE)を中心としたリスク評価と抗血栓薬の使い分けについて整理した。特に、副腎摘出術、肝臓摘出術、脾臓摘出術、乳腺腫瘍摘出術など、血栓に注意すべき代表的術式を取り上げ、周術期にVTEを想定すべき背景を概説した。
さらに、未分画ヘパリン(UFH)、低分子ヘパリン(LMWH)、DOACの作用機序、利点・欠点、適応場面、モニタリング、中止・再開の考え方を比較し、緊急性が高く可逆性が必要な症例ではUFH、安定症例ではLMWHやDOACを選択する考え方を示した。あわせて、術後に血栓症が疑われた際の初期対応と血栓溶解療法の位置づけにも触れた。

コメント

腫瘍外科における抗血栓療法は、画一的な予防投与ではなく、出血リスクと血栓リスクを総合的に評価し、適切な場面で適切な薬剤を選択することが重要である。