Journal Club 202607
腫瘍科で行っているJournal Clubの要約を掲載いたします。内容の詳細につきましては原著論文をご参照ください。
2026.07
初回ステロイド投与の用量および期間は、多中心性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の犬の予後に影響を与えない
Dose and Duration of Upfront Steroid Administration Have no Prognostic Impact in Dogs With Multicentric Diffuse Large B-Cell Lymphoma
Ilaria Maga, Silvia Sabattini and Valeria Martini et al., Vet Comp Oncol. 2025 Jul 8. doi: 10.1111/vco.70004.
ステロイドは、多中心性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の犬において、臨床症状の急速な改善をもたらす。しかし、化学療法前にステロイドを使用すると、化学療法抵抗性を誘発し、アポトーシス細胞の増加により診断率が低下する可能性がある。この後ろ向き研究では、化学療法を受けたDLBCLの犬における、ステロイドの投与量と投与期間がフローサイトメトリー(FC)診断率と臨床転帰に及ぼす影響を評価した。2014年1月から2024年3月の間にDLBCLと診断された273頭の犬のうち、67頭(24.5%)が治療前にステロイドを投与された(投与量の中央値:1 mg/kg、範囲:0.5~3 mg/kg、投与期間の中央値:8日間、範囲:1~1080日間)。94.0%の症例で、ステロイドはリンパ腫の管理のために投与された。すべての犬がCHOPベースの化学療法を受け、38頭(56.7%)は免疫療法も受けた。進行までの期間(TTP)とリンパ腫特異的生存期間(LSS)の中央値は、それぞれ143日(95% CI: 111~175)と196日(95% CI: 152~240)であった。ステロイドの投与量、投与期間、累積投与量は、TTPまたはLSSに有意な影響を与えなかった。しかし、免疫療法を追加すると、LSSが長くなることが示された(p = 0.023)。FC診断率は、ステロイド治療を受けた犬では、前治療を受けていない67頭の犬と比較して低くなった(p = 0.042)。しかし、前治療を受けたグループ内では、投与量も投与期間も診断率に影響を与えなかった(p > 0.05)。さらに、TTP(p = 0.003)とLSS(p < 0.001)は、ステロイド治療を受けた犬と比較して、前治療を受けていない犬で有意に長くなった。これらの結果は、初期ステロイドの有害な影響は、投与量や投与期間とは無関係であることを示唆している。コルチコステロイドは診断や治療結果を損なう可能性があるため、慎重に使用し、臨床上の利点がリスクを明らかに上回る場合に限定すべきである。
コメント
化学療法前のステロイド投与は、投与量や投与期間にかかわらず、FC診断率や治療成績を低下させる可能性がある。緊急性がない場合は、確定診断前の投与を避けるべきである。ただし、後ろ向き研究であり、交絡因子の影響には注意が必要である。